老人ホームの大切さ

看護師が、老人ホームでお年寄りの方を世話しているうちに、次第に自分の祖父母の姿を思い出していくことはないでしょうか。ましてや、その祖父母がすでに亡くなられたのであれば、今自分が世話をしているお年寄りの方から、かつての祖父母の面影を探そうとすることも考えられるのです。そのため、祖父母が目の前の人の姿を借りて現れたんだと言ってくれたらどんなに嬉しいことか、と一人ごちることもあるでしょう。そして、「祖父母が亡くなったことでこんなに切ない気持ちになるんだったら、もっと仲良く接していけば良かった、祖父母が生きていた頃に戻れるのならば、その時に戻って何か心温まる一言でも言ってやりたい」という気持ちがあふれ出すことも考えられるのです。

自宅で自分の祖父母を看取っている上に、仕事でも看護師としてお年寄りの方の看護に明け暮れている方がおられるでしょう。そうした日常を送っているうちに、次第に祖父母と施設のお年寄りの方のどちらを看取っていても同じような感覚で接している気持ちになることはないでしょうか。お互いに高齢であるという点だけで尊いものだといったイメージを抱くからなのでしょうけれど、高齢であるため体の機能が弱っているからこそ大事にしていかなければいけないという気持ちになると言った方が合点がいくのかもしれません。

高齢者を看取ることが大切であることは、高齢化が進む社会だからこそ、周りの人による支援によって高齢者を支えていくことが大切になってくるのです。そして、高齢者がいることで場の雰囲気を盛り上げる上での貴重な存在となるからこそ、周りの人も高齢者とのコミュニケーションを有意義なものとして捉えていくべきであり、今日まで生き抜いてきた高齢者の勇敢な姿を敬う姿勢を持つことで、おのずと高齢者への看護も親切で丁寧なものへとなりうるのです。